「財布を太らせる七つの極意」が有名な本。
バビロンを舞台に、章によって登場人物が変わり物語が進行します。
七つの極意を箇条書きするとこのようになります。
①財布の中の貨幣10枚のうち、使うのは9枚まで、残り1枚は貯める
②まず必要不可欠なものを手に入れてから、楽しいことや価値あることに費やすが、収入の9/10を超えないこと
③蓄えた金を働かせ、増やす
④慎重に元本が保証された投資をする
⑤賃貸ではなく家を買う
⑥老後や家族の将来のため早くから備える
⑦自分の能力を向上させ、収益力を高める
⑤以外は多くの人が同意できる内容でしょう。
これはこれで面白いのですが、私は「バビロンの駱駝商人」に登場するシラという第一夫人の気高い女王の魂が好きです。
自由民だったダバジール、借金が返せず没落し、強盗団に入るも団の強盗失敗により、シリア人族長の奴隷となる。
ダバジールは、族長第一夫人シラの駱駝の世話係となり、ダバジールがかつて自由民だったと告白するとシラに、
『おのれの弱さゆえここまで堕ちた身で、どうして自由民を名乗れるのでしょう?おのれの内に奴隷の魂を宿す者は、いかなる家門に生まれようと、低きに流れる水のごとく、奴隷となり果てるのではありませぬか?自由民の魂を宿す者は、たとえ不運に見舞われようと、生まれ育った街で人から敬われ、誉れ高き人間となるのではありませぬか?』
と諭されます。
気高いシラのセリフが魅力的です。
実はシラ自身も持参金目当てで結婚させら、夫に女として求められていない不遇な境遇、しかしながら、シラの魂は高潔です。
それからダバジールは自分の魂は、自由民の魂か奴隷の魂かを自問自答、時折、シラに今の魂はどちらだと聞くも一蹴されます。
シラの他のセリフも勇ましく感情が揺さぶられます。
『奴隷同然の身に甘んじるより死を選ぶ』『シリアの奴隷で終わるなら、そなたは腰抜けです』『ならば、証を立てなさい』『そなたの誇りは土にまみれ、今やシリアの奴隷となり果てました』『そなたはそなたの道を進みなさい』など奴隷の魂でいられなくなります。
その後ダバジールはシラの手助けによりシリア人族長の奴隷から脱走し、バビロンで駱駝商人として成功します。
「財布を太らせる七つの極意」は金を貯めるテクニック、「バビロンの駱駝商人」は経済的に成功するためのメンタル話だが、2つでセットです。
人間はどうしても目先の欲望に負け、金を使う。
強いメンタル「自由民の魂」を持たなければ、財布を太らせることはできない。